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タルタロスオンラインにおける萌えを綴る場所。
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パッと見ハロウィンネタだとわかりづらいかもしれないけど…
とても響きが好きな言葉がしっくり来る気がして、タイトルに
してみたり。
「World is …?」がロト視点だったのに対し、続編に当たる
こちらはモド視点。

今更?

そうはいっても、どうしても出したかったんだ…
時期を逃しちゃったけど、これだけは!って、ありますよね?
ありませんか…むぅ…
とりあえず、同意していただける方は続きをどうぞ。
夢幻



私が風邪を引いて以来、アエルロトは実にマメに―茶の時間に手作りの菓子を出すようになった。
以前からアエルロトは料理が得意だとは知っていたが、プリン以外も絶品でな。
シュークリームだとか、ワッフルだとか、クリームたっぷりのそれらは私に至福の一時をくれる。
…胃袋を手懐けられてしまっている気がするのは気のせいだ。
あいつは『新しいレシピに挑戦してみたのですが、クロモドさんに試食をお願いしたくて』と、最初に私のところに来る。
私はそれに協力してやってるだけなのだから…。
しかし、私が夢中でそれらを食べる姿を見て、アエルロトは『お気に召したようで、光栄です』などと言いながら、目を細める光景は、私の中で日常の一コマになりつつあった。
だが―平穏な日常というのは、脆く儚きものだと思い知らされる事件が起きるのだった…。

その日も私はアエルロトの手作りアップルパイで、のんびり茶の時間を堪能していた。
アエルロトと二人で過ごす時間は、特に会話がなくても気まずさがない。
遠征隊メンバーも居る時は饒舌なアエルロトも、私が静かで落ち着いた時間を好むと知ってか、たまに『お茶のおかわりはいかがですか?』と聞いてくるくらいだ。
それがとても心地よい。
もう一切れ、とパイに手を伸ばした瞬間、騒がしい足音とともに『お腹すいたー』などと言いながら、ピンコが近付いてきた。
少し遅れてイリシアも入ってくる。
皿の上のアップルパイを見て、ピンコが『おー』とか歓声を上げた。
「ね、これ食べていい?」
そんな問いかけにアエルロトは笑顔で答える。
「ええ、どうぞ。よろしければイリシアさんもいかがですか?まぁ、私が作ったものですから、味の保障はしませんが。」
「そうね、頂こうかしら。」
そんなやり取りの合間にもピンコはパイを一口食べるなり満面の笑顔に変わった。
「へぇ、アエルロトってスイーツ作れるんだ?って、何これ、美味しー!」
イリシアも無言で頷き、微笑む。
「ハハハ、お気に召したようで何よりです。お茶も差し上げますね。」
カップを用意すると、慣れた手つきで紅茶を淹れ、砂糖とミルクの確認をする。
……あんた、放浪騎士という肩書きじゃなかったのか?
頬杖をつきながら何気なくアエルロトの手元を見ていると、ピンコが面白いものを見つけた!といわんばかりにこっちを見ていることに気付いた。
「ねぇ、もしかして…クロモド先生、いっつもアエルロトのスイーツでお茶してんの?」
「だとしたら、何だというのだ?」
まさか自分も加わりたいとか言い出すのか?
そんな私の考えが伝わったのか、ピンコは派手に溜息を吐く。
「スイーツ食べて喜ぶのは女の子か子供だけだと思ってたよー。結構可愛いトコあるじゃん。ってゆうか、気持ちはわかるけど、クロモド先生完全に餌付けされたね。」
…やはり、そうなのか?
いや、しかし―わ、私はっ…!
アエルロトがフォローに回るより早く、イリシアが口を挟む。
「大人をからかってはダメよ、ピンコ。こっちへいらっしゃい。」
「えー、つまんなぁ~い!」
不満げな顔をしつつもピンコはイリシアに従い、場を離れる。
その背中を見送りながら、アエルロトが苦笑した。
「ハハハ…流石に付き合いが長いだけあって、手馴れたものですね。」
私にとって、そんな事はどうでもよかった。
「アエルロト、正直に答えろ。成人男子が嬉々として菓子を食すのはおかしいのか?」
そう問いかけると、彼は驚いた様子で目を見開き、すぐに微笑む。
「咄嗟のことでフォローは出来ませんでしたが、そのようなことを気にする必要などありませんよ。幾つになっても『好きなものは好き』ということで、ね?」
そうは言われても、やっぱり気になる。
そこで、私は幻影魔法をいくつか調べた。
――周囲からの見た目だけでも、私が子供の姿になれば…いや、なんでもない。

その発想が巻き起こす騒動など、このときの私は知る由もなかった―。

◇  ◆  ◇

その翌日。
村の至る所にカボチャが置かれるようになった。
何かの祭りが近いらしい。
アエルロトもピンコや宿の主人に頼まれたとかで、カボチャを使ったレシピに挑戦しているようだ。
例によって私に試食を、というので付き合ってやった。
パンプキンパイだったのだが、私好みの甘さで美味い。
その時にアエルロトからハロウィンの説明を受けたり、ハロウィン当日には私にだけ特別なメニューを用意する予定だと打ち明けられ、少々複雑な心境になる。
…子供が仮装行列して菓子をねだるイベントなのに、何故私だけ特別メニューなのだ…。

狩に出るアエルロトを見送り、私は幻影魔法の習得に励んだ。

◇  ◆  ◇

その翌日。
アエルロトはカボチャ狩りの報酬だといって私に魔女の帽子と魔女の箒を差し出した。
デザインや性能も悪くないように思い、装備を変更する。
…顔見知りに会う度に『魔女っ子』と呼ばれるんだが、私は大魔法師だと何度言わせれば気が済むのだ!

◇  ◆  ◇

そして、ハロウィン当日。
外に出て、魔方陣の描き方などの細かな点を魔道書で確認しつつ、詠唱に入る。
この日まで一度も試すことが出来なかったが、私は大魔法師だからな。
失敗などしない、するはずがないのだ、と自分自身に言い聞かせる。
そして―。

目を開ければいつもよりも視点が低く、妙に空が高く感じた。
手にした本はズシリと重く圧し掛かる。
とりあえず、用意した手鏡を見ると、私が望んだ姿がそこにあった。
しかし、何かがおかしい……。
今、私が身につけている長袖シャツも、茶色のベストも、赤いリボンタイも、ベストと同色の半ズボンも―裁縫が得意だった、私の母が作った物にそっくりなのだ。
サイズもピッタリだし、これではまるで―。
そこで私は漸く気付いた。
開くページを間違えたのだ、という事実に…。
栞を挟みすぎたな。
まさか、こんな初歩的なミスをするとは!
それはさておき、今は一人になりたい。
『元に戻る方法はあるのか』だとか、調べなければならないことは山ほどあるのだ。
私は村外れの大きな木の下に腰を下ろし、関連項目を熟読する。

結局、その魔道書では必要な情報を得られず、アルポンスを呼び出そうと思ったのだが…なぜか声が出ない。
喉を擦りつつ、何度も試すが、徒労に終わった。
声が出ないということは、詠唱が出来ないということ。
もし仮に元に戻る方法があったとしても、私には―。
そう考えると、不安と恐怖で押し潰されそうになる。
このまま、クインシーとの約束も果たせなくなってしまうのか…?
膝を抱えて蹲っていると、村の子供を引き連れたピンコに声をかけられた。
「元気ないね、どうしたの?」
私は顔をあげ、喉を指示したり腕を交差させたりして、声が出ない旨を伝えた。
ピンコもこちらのメッセージを理解したらしい。
「よし!一緒においでよ。」
そう言うと、笑顔で私に手を差し伸べる。
生意気なところもあると思っていたが、意外と優しいのかもしれんな。

私はピンコに手を引かれながら、村人達の家を練り歩いた。
ピンコは行く先々で村の大人達に『この子声が出ないみたいなんだけど、私達の仲間だからさー、この子にもお菓子あげてよ』と説明して回る。
おかげで私も飴やら何やら、色々と貰ってしまった…。
そして、一行の最後の目的地には、甘い香りを身に纏ったカフェ服を来たアエルロトが待機していた。
「Trick or Treat!」
私以外の全員が期待で瞳を輝かせて叫ぶと、アエルロトは『営業用』の穏やかな微笑を浮かべる。
「元気があって、とても良いですね。私からはこれをあげましょう。カボチャのパイですよー。」
一人ずつに切り分けたパイを配る彼にも、ピンコは同じ説明をする。
「わかってますよ、心配しなくても大丈夫ですから。」
と、アエルロトは私にもパイをくれた。
そして、膝をついて私の顔を覗き込むと頭を撫でて、普段私にしか見せない特別な笑顔を見せる。
「あなたには喉に良いお菓子の方が良いかもしれませんね。あ…ピンコさん、他の子達を家に送ってくれませんか?」
「OK!んじゃ、みんな行くよー!」
ピンコは素直に子供達を家に帰しに行く。
「さ、こちらへどうぞ。」
私はアエルロトに手を引かれ、宿の食堂に腰を下ろす。
生クリームを乗せたココアを出され、私は遠慮なくそれを飲んだ。
アエルロトのような、優しくてホッとする味だ。
とても美味い。
『美味しいですか?』と問われて頷くと、とても嬉しそうに笑う。
しかし、これは飲み物であって菓子ではないな。
喉に良い菓子とは何だろう…。
そう思うと自然に期待で表情が緩む。
そんな私を見守りながら、アエルロトは終始笑顔だった。
私がココアを飲み終わったのに気付くと、アエルロトは私の前にプリンらしきものを置く。
「さぁどうぞ。」
一口食べてみて、風邪を引いた時とは別の味だと気付く。
カボチャプリンとは、な…これはこれで美味い。
プリンに夢中で、私はアエルロトが複雑な面持ちでこちらを見ていることには気付かなかった。
しばらくするとピンコも戻ってくる。
「あ、アエルロト。今日はありがとね!みんな美味しいって喜んでたよ。」
「ハハハ。それは嬉しいお言葉ですね。」
そんなやり取りのあと、こちらを見て続ける。
「あ、その子はどうしようか。って、それ…クロモド先生用のスペシャルメニューじゃなかったっけ?」
…私用のメニュー…だと…?
そういえば、そんなことも言っていたな…いや、ちょっと待て。
私の為のプリンを、どこの誰とも知れん子供に与えるというのか?
そう思った時、私の考えを見透かしたようにアエルロトが口を開く。
「この子の家なら知ってますから、私が送り届けます。それと、これは遠征隊の皆さんに食べていただこうと思っていた物ですよ。私の分ですから、問題はないかと。」
「へえ、マメだねー。こりゃーアエルロトの恋人は幸せだねっ。」
ふふふー、と意味深な笑いでピンコが立ち去ると同時に私はカボチャプリンを食べ終えた。
それを確認すると、アエルロトは私に手を差し出す。
「さぁ、お手をどうぞ。」
素直にその手を掴むと、アエルロトと私に宛がわれた部屋に連れて行かれた。
勧められるまま椅子に座ると、アエルロトも私の横に座り、私の頬に触れる。
その手が妙に大きく感じて、無性に切なくなった。
ぽろっと零れ落ちた涙を指の腹で拭われ、頭を抱き寄せられる。
「泣かないで…あなたの涙は―」
そんな呟きとともに、私はアエルロトの膝に乗せられ、強く抱きしめられた。
その力強さと、守られている感じが―私に安らぎをくれる。
だが、本当に元に戻れないとしたら、この先私はどうすれば良いのだろうか。
―今の私は子供なのだ、少しくらいアエルロトに縋って泣いても―そんな甘美な誘惑に負け、すすり泣く。
アエルロトは私の背中を撫でながら、落ち着くまで待っていてくれた。

ようやく落ち着いて、もう一度彼の名を呼びたい、と恐る恐る口を開くと―。
「あえる、ろとぉ……。」
少し高めの上擦ったものだが、声が出た。
「やはり、そうでしたか。一目見た時からそうではないかと思っていましたよ。」
驚いて顔をあげると、どこかホッとした様子のアエルロトと目が合う。
「姿形が変わろうとも、クロモドさんのその眼差しは変わりません。見つめ合うと心惹かれるその感覚は、あなた以外ではあり得ないのですから。」
アエルロトの言葉に涙が溢れ、私はもう一度彼の胸で泣いた。

それから事情を話しているうちに月も高い位置に来て、懸念事項であった私の姿がゆっくりと―元に戻った。
「おかえりなさい、クロモドさん。」
と、私の姿を確認してから、アエルロトは私の為のスペシャルメニューを出してくれたのだが―。
それはバケツ一杯分のカボチャプリン。
美味いのはわかってるし、アエルロトの心尽くしの逸品であることも理解はできるのだが…しばらくカボチャは懲り懲りだ。
こうして、様々な教訓を残してハロウィンの夜は更けていくのだった。

◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆

すっかり遅くなっちゃいましたが、カボチャプリンようやく納品!
旬を過ぎてしまいましたが、待っててくださった方々、いかがでしょうか…

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