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タルタロスオンラインにおける萌えを綴る場所。
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これ含めてあと4回で完結です。

続きどうぞー。

 
 再会

グリンデル村に入ると、村人は皆親しげにアエルロトに『お帰り』と声を掛けてくる。
やはりアンジェリナが懸念したとおり、アエルロトは混乱したようだが、イザンがそっと耳打ちする。
「あなたは『アリエル』と『アエルロト』という二つの名をお持ちでした。私達は『アリエル様』は存じておりますが、『アエルロト様』に関してはこの村の方々の方が詳しいでしょう。」
「そう……でしたか。」
あともう少しで何かが掴めそうな気がする。
断続的な頭痛を感じながら、ゆっくり進んでいくと―初めて会ったときと同じように、クロモドは植物と対話中。
また何か新しい植物を育てているようだ。
その時、こちらに背を向けていた彼が、何かに弾かれたように振り向いた。
「アエルロト!」
クロモドの声は、琥珀の一つを打ち砕き、アエルロトの心や魂を揺さぶった。
「貴方のその声…とても懐かしい気がします。もっと呼んでください、その声で。もう一度、私の名を……。」
そうすれば、また何か思い出せるかもしれない。
しかし、アエルロトのそんな事情はクロモドには伝わらず、クロモドは憤慨した。
「ずっと……ずっと心配して探していたのに、今更そんなことを言いに来たのか、あんたは!!」
その言葉を受け、イザンは一歩前に進み出た。
「お待ちください!アエルロト様は記憶を失っておいでだったのです。そこで、こちらでお預かりして今日までお世話をさせていただいておりました。その旨通達の義務を怠ったのはこちらの落ち度ですが、アエルロト様は悪くありません。」
イザンの弁護でクロモドはハッとした。
「記憶、喪失…だと…?まさか、私のことも覚えていないのか…?」
アエルロトは心苦しそうに目を伏せ、頷く。
「はい…。でも、あなたが私の名を呼んでくだされば、何かを思い出せるかもしれません。」
「そう、か。事情も知らずにいきなり怒鳴って悪かった。」
そう言うと、怒りの矛先を向ける相手が居なくなった為に、隠し切れなくなった切なさと寂しさが、雫となって零れ落ちる。
アエルロトは堪らず彼に駆け寄り、その涙を指の腹で拭う。
「泣かないで。あなたの涙は―。」
初めてそれを聞いたのは、ハロウィンの頃。
その言葉を聞き、クロモドは寂しそうに笑う。
「あんたが甘い言葉を吐くのは『素』だったんだな。記憶をなくしても、いつぞやのセリフを口にするか。」
そのリアクションが、間違いなく彼の記憶に自分が存在することを感じさせる。
風になびく度にキラキラと光を反射する銀の髪もまた、アエルロトの記憶を呼び起こそうとしていた。
「少々失礼しますね。」
事前に断ってから彼を抱きしめてみると―また一つ、琥珀が砕けた。
記憶には無くても、体が彼の温もりを覚えていたのだ。
それはアエルロトに一つの確信を齎した。
(間違いなく、『私』は彼を知っている。そして、とても親密な間柄であったことも疑う余地はありませんね。しかし…思い出すには、刺激が足りない)
一方、クロモドの方はいつもと変わらぬアエルロトの抱擁を受けているのに、心は満たされなかった。
何故ならば、アエルロトの記憶は完全には戻っておらず、その行動も愛情表現とは違っていたから。
本人が目の前にいるにもかかわらず、本当の意味でアエルロトが戻ってくるのはまだ先のことなのだと思い知らされ、ただただ切なくて、クロモドは『アエルロトに良く似た別人』の胸で、声を押し殺して泣いた。

いつの間にかアンジェリナとイザンの姿は消えており、二人は家に入った。
 

 

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